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冷間鍛造材の疲労強度の向上原理を解説
2023/10/18 11:22
- 冷間鍛造材の疲労強度が向上する原理が説明出来ません。
- 冷間鍛造材は表面に沿って鍛流線ができ、反復曲げ応力に対して強いとされています。
- 冷間鍛造材の疲労強度が高い理由について、硬度アップによる引っ張り強度向上と残留応力による負荷応力緩和が考えられますが、現象の解明には矛盾点が存在しています。
冷間鍛造材の疲労強度が向上する原理が説明出来ませ…
2010/01/05 10:53
冷間鍛造材の疲労強度が向上する原理が説明出来ません。
冷間鍛造材は表面に沿って鍛流線ができ、反復曲げ応力に対して強いとされています。
http://www.kikusui.org/knowledge/index.htm
何故冷間鍛造材の疲労強度が高いのか?現象分解したいのですがよく判りません。
自分なりに考えて見ましたが、矛盾点が解消しません。
1.想定原因
?硬度アップによる引っ張り強度向上
組織が微細化する際に結晶間に滑りが生じ、滑りの増加と伴に滑り抵抗が大きくなる。
(滑り抵抗大=硬くなる⇒引っ張り強度向上⇒疲労強度向上)
?残留応力による負荷応力緩和
鍛流線に沿って圧縮残留応力が掛かっており、曲げによる引っ張り応力を緩和している。
(平均応力を圧縮側へシフトさせる)
2.矛盾点
?硬度アップ効果
応力負荷方向が鍛流線に沿っている事が、疲労強度改善の要因とされています。
硬度が要因であれば、鍛流線の向きは関係ないのでは?
?残留応力効果
材料が引っ張られた結果、鍛流線が発生したと考えます。
鍛流線の方向へは引っ張り残留応力が残っているのでは?
どなたかアドバイスをお願いします。
http://www.kikusui.org/knowledge/index.htm
回答 (5件中 1~5件目)
質問への答を考える上でヒントになることが一つ。冷間鍛造の効果は、もちろん冷間鍛造ままの製品にあるわけですが、冷間鍛造後に熱処理(焼入焼戻または焼ならし)した後でも効果があるという事です。
想定原因?(硬度アップ)。
「硬さ増加→引張強度向上→疲労強度向上」は正しい。
ただその前文は少し違います。
「組織が微細化する際に」鍛造しても結晶粒は微細化しません。正しくは「結晶粒が著しく変形する」です。ただ鍛造後に熱処理すれば再結晶が起こり微細化することはあり得ます。
「結晶間に滑りが生じ」結晶粒そのものが変形する、つまり滑っているのは結晶粒内の結晶構造そのものであり、結晶粒間が滑るわけではありません。
「滑りの増加と伴に滑り抵抗が大きくなる」結晶粒の変形が進むことにより、結晶粒内に転位と言われる結晶構造の欠陥が蓄積し、それ以降の結晶粒の変形を抑制します。「滑り抵抗が大きくなる」とは、「変形抵抗が大きくなる→硬さ・強度が向上」と同じ意味になります。
想定原因?(残留応力の効果)。
こちらは正しくありません。冷間鍛造により残留応力が生じることは確かです。でもそれが製品使用中の外部負荷に対し、それを緩和する方向になっているとは限りません。そこまで制御することはできません。
矛盾点?。
最初の述べたヒントが、この答えになります。圧延材でも同じことで、圧延方向(冷間圧延、熱間圧延とも)の靱性や疲労強度は、直角方向の靱性や疲労強度よりも高いということです(圧延ままでも、熱処理後でも)。圧延材の場合は繊維組織(ファイバーフロー)と呼びますが、鍛流線も同じものです。
矛盾点?。
鍛造は引張っているのではなく、つぶしていると言えます。
仮に表面だけを引っ張ると、内部は追従できないので、むしろ表面に圧縮、内部に引張応力が残留します。
冷間圧延材の場合も、圧延方向に引張残留応力が発生することはありません。引張残留応力があればそれとバランスする圧縮応力がなければなりません。
「金属組織が緻密化する」なんとなく起こりそうな現象ですが。
密度、体積は変化しません。
結晶粒の個数が増加することもありません(上記の通り)。
ただ結晶粒がつぶれてしまうので、一見すると緻密になったように見えます。
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部外者のプラスチック屋が邪魔して申し訳ありません。強化ガラスは板ガラスを急冷したもの、プラスチック試験片も急冷すると疲労破壊強さがアップすることが知られています。またプラスチック材料は充填密度がわずか1%低下するだけで引張り強さはなんと10%も低下します、射出成形は押出成形や圧縮成形より強いです。プラスチックの疲労率(=疲労強さ/引張り強さ)は~1/4、~1/10です。「繰返し応力による破壊は試料中の欠陥、空洞に応力集中するから引張り強さの数分の一で破壊にいたる、それが表面相などを圧縮方向に歪ませると密度があがり、欠陥が縮小されて、疲労強さがあがる」と説明、解釈されています、プラスチック屋はこれで納得しています?が
>?硬度が要因であれば、鍛流線の向きは関係ないのでは?
関係アリアリですが、冷鍛品では試しづらく判りにくいだけです。
冷延の板バネ材料ではペンチでつまんで曲げを繰り返す程度の疲労テストでも、圧延方向(=鍛流線)の違いがわかる場合があります。
>硬度が要因であれば
上記からも、それだけでは説明できないということでしょう。
硬度-強度の関係はミクロ組織に大差がない条件下でいえることで、とりわけ疲労強度について、硬度だけでは何とも言い難し。
>?鍛流線の方向へは引っ張り残留応力が残っているのでは?
一応、そう言えるかと思います。問題はレベルがどうであるか。
これもバネを持ち出します。
参考資料?ではピアノ線などは伸線、ばね成形の工程で外側は引っ張り応力が残留しており、逆に内側では圧縮応力が残留するとなってます。
そのまでは耐変形能、耐久性に問題あるので、テンパーリング、ブルーイングと称する低温熱処理で応力緩和を図ります(完全除去ではないハズ)
残留応力の値について、?では100N/mm2のオーダ(セッチング工程のみ!!)
一方で加工硬化による応力限アップは、SPCCであっても1.5倍~、ばねのピアノ線、ステンレス線ならもっと強くなり、上記値より遥かに大きい。
結論として、引っ張り残留応力を放置するマイナスを差引しても充分な効き目が得られる。
自信が持てないのは?が強度の伸線による値ではないこと。が、そんなに大きい値で残留してることは考えにくい。。。
参考資料忘れ!!スミマセン
? 参照>>4)低温焼鈍
http://www.katospring.co.jp/spspcl.nsf/5d0f440be78eaeb749256cb8001964a2/a65c84ffd0ba349249256cc6002107a8?OpenDocument
?残留応力の測定例
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jssr/tech/kandokoro/kan40.pdf
『金属組織の緻密化』という言葉を持ち出されると困ってしまう。。。。
というのも、原子レベルの金属結晶で言う?格子欠陥?また?転位?では、話が逆なんです。
金属は焼ナマシ未加工状態の方が格子欠陥が少ない。
ここから加工硬化させると格子欠陥が増えていく。それで結晶間の滑りが妨げられ強度が上がり、あるレベルまではつれて疲労強度もが上がる。どうも緻密化とは逆の原子間が乱れが増すことになっている。しかし巨視的には緻密化の逆として密度が下がるようなものでもないはず。
ところで、最近、純度を99.999%以上にまで高めた超高純度鉄では、錆びにくいし、非常に強いことが判ってきました。
これは普通の鋼より遥かに格子欠陥が少ない。しかしまだまだ原子の結合力という理論限界よりは低い。
鉄を強くするにはまずカーボン、次に合金元素の添加量を上げて硬くする工業的なやりかたと、不純物を取除き純度を上げる両極がある。
私には、これを原理的に統一して説明する知識は持ち合わせません。教えてもらってない!!
【参考】
http://ms-laboratory.jp/strength/2/strength_2.htm
2.さんの追記へのコメとして、残留応力は測定可能です。
薄い板に限られるが、表皮を酸で溶かして取除いていき、それによって残留応力が消えたことによる変形から逆算出来る。
最近ではX線照射して直接測る方法が登場しています。
矛盾点の
?硬度アップ効果;応力負荷方向が鍛流線に沿っている事が、疲労強度改善の要因とされています。
硬度が要因であれば、鍛流線の向きは関係ないのでは?
↓
加工硬化によって硬度アップし、引張や圧縮の強度が増します。
また、冷鍛の方向により加工硬化層が、木目のようになりそれが鍛流線となります。
その鍛流線が≡≡≡≡の方向で上下から力が加わったり、曲げが加わると硬度アップとなります。
これが、鍛流線の方向とより強度アップの関係です。
?残留応力効果;材料が引っ張られた結果、鍛流線が発生したと考えます。
鍛流線の方向へは引っ張り残留応力が残っているのでは?
↓
これは???です。材料が引っ張られた結果、鍛流線が発生したと考えないからです。
加工硬化による鍛流線の硬化層が、木目や繊維方向と同じようになると考えるからです。
残留応力が少しは影響しているのかもしれませんが、調査するすべがないです。
それよりは、冷間圧延鋼板のように加工硬化で硬度アップする。
その加工硬化層が鍛流線に現れる。
鍛流線間の層は残留応力が発生しているのかもしれませんが、剛性より粘りに貢献している
と考えます。
日本刀を鍛錬するのにも似ているし、鍛流線の硬化層が芯となって剛性に貢献していると
考えた方が良いと思います。
お礼
2010/01/05 17:34
コメント有難う御座います。
確かに材料が引っ張られた結果鍛流線が発生したと言うわけではないかもしれません。
あえて言うならば、金型と被加工材が強く接触した事により、金型より軟らかい被加工材が押しつぶされたと考えるべきだと思います。
金型で圧が掛かっている最中は、被加工材は圧縮されて、金型の圧が抜けた後はスプリングバックで膨張するのでは?結果として引っ張りの残留応力が掛かっていると言う事は無いでしょうか?
?硬度アップによる引っ張り強度向上
硬度と強度の相関についてはさまざまな報告がされていますが,鋼材について
は概ね比例します。原因は加工により発生した転位がすべりを阻害すると考
えられます。
?残留応力による負荷応力緩和
メタルフローが表層に沿って形成され,表面がその密度が高くなると考えられ
ます。そのため表層におけるクラックの発生を抑制すると考えられます。
概ね貴君の提示のとおりだと思いますが,メタルフローの向きと表面硬度とは
直接影響はないと思いますが,表層に滑らかなメタルフローができることで,
クラックの発生の抑制効果はあると思います。また表層部の残留応力は硬化
を促すため,強度は上昇すると考えます。
矛盾として提示されている点ですが,?硬度アップ効果はメタルフローの向き
ではなく,密度に関係すると思います。?残留応力効果により,強度が上昇し
ます。疲労強度は繰返し応力ですから,その感度は応力の絶対値ではなく応力
の振幅に依存します。メタルフローの向きが揃うと表層の組織が均質化され
表層からのクラックの進展が阻害されます。
フローの向きそのものが問題ではないと思います。
残留応力をX線回折を利用して計る手段もありますが,高価な装置だと思い
ますので,測定されるのであれば依頼試験で実施する方がよいと思います。
(参考)
http://www.matech.co.jp/pdf/proto/newsystem.pdf
http://www.a-kit.co.jp/02/ichiran/s2_d2_f1.html
塑性加工→加工硬化→降伏点の向上→疲労強度向上 と考えます。破壊は
すべり面の欠陥(転位)の移動速度の影響を受けます。加工による変形で生じ
た転位は転位そのものの移動を阻害します。そのため硬化し,小さなひずみ
で大きな荷重まで耐えるようになると考えています。
以下に疲労や破壊についての興味ある文献が紹介されています。
http://ms-laboratory.jp/strength/st_top.htm
お礼
2010/01/05 17:55
コメント有難う御座います。
硬度アップが疲労強度の一要因であり、それは鍛流線の向きとは関係しない。
鍛流線の向きと関係するのは、やはり残留応力であるが、それ以外に面状態も影響する。
上記の様に理解しました。
硬度も面状態も客観的に確認する事が可能ですが、残留応力をどの様に確認するか?が問題です。
残留応力が「圧縮」である事が説明できれば良いのですが、圧縮である理屈がうまく説明出来ません。
実はX線による残留応力測定は実施済みで有ります。
しかしながら、疑問の残る結果となってしまいました。
よくよく調べて見ると、鍛流線の様な組織が緻密に変形した部位では正しい測定は出来ない様です。
お礼
2010/01/07 11:00
コメント有難う御座います。
<<結論として、引っ張り残留応力を放置するマイナスを差引しても充分な効き目が得られる。
「不確定な残留応力を考えなくても、金属組織の緻密化によって疲労強度の向上効果主要因」
と言うことでしょうか?
一点わからないのは、金属組織が緻密化する事により、疲労強度が改善するのは硬度アップ要素以外の要素もあると思うのですが、一般的にどの様な因子が認められているのでしょうか?